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高松家庭裁判所 昭和37年(家)16号 審判

申立人 大山正子(仮名)

主文

当裁判所が昭和三十六年十一月二日なした申立人大山正子の保護義務者に本籍並びに住所香川県木田郡三木町大字池戸○○○○番地大山文を選任する」との審判はこれを取消す。

理由

申立人は申立人の保護義務者大山文を解任する旨の審判を求めその理由とするところは要するに保護義務者である申立人の養母大山文は申立人に対しうるさい存在で精神衛生上有害であるからその解任を求めるというのにある。

本件記録中の調査官の調査報告書、医師吉田寧ならびに大山文の各陳述に別件当庁昭和三十六年(家)第五六一号保護義務者選任審判事件の記録を綜合すれば申立人大山正子は精神分裂病のため昭和三十六年九月二十三日高松市天神前大西病院に入院したため、同院長大西義衛の申立により当裁判所は申立人大山正子の養母である大山文をその保護義務者に選任したこと申立人正子はその後経過良好にて同年十一月一日退院したことならびに以来一応平穏無事に生活を続けていることが認められる。

思うに本件申立は保護義務者大山文の解任を求めているのであるが、現在この種解任の制度はなく、たださきになされた保護義務者選任の審判取消の職権発動を促がす趣旨と解すべきところ、既に申立人正子は精神病院を退院し平穏な生活を続けている今日、もはや精神衛生法第二〇条にいう保護義務者の存在理由は消滅したものというべきである。従つて当裁判所は家事審判法第七条非訟事件手続法第一九条に従い、単に将来に向つて、さきに当裁判所がなした保護義務者選任の審判を取消すべきものとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 萩原敏一)

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